美楽締め(みらじめ)とは
鮎の香りを楽しむ高級料亭へ出荷するのに「鬼締め」が有名ですが、ご家庭で楽しむなら瞬間冷却が出来て「たて塩(塩を溶かした水)」による下味処理も兼ねる「美楽締め(みらじめ)」がオススメ♪
お魚を塩焼きで食べる場合に行う「たて塩」は、魚のにおいを抑え余分な水分も抜けて身が締まってうまみもアップします。
香りを楽しむ鮎の場合、少なからず鮎のにおいに影響がある為プロは塩を加えないとの事ですが、この方法で締めて持ち帰った鮎でも下処理の際にはバッチリ鮎の香りが部屋中に充満します♬
お上品な舌をしていない庶民派「みらどり」は、この方法がとてもスマートで楽なので数年前から美楽締めで鮎を持ち帰っております(名前は最近付けました笑)。
一般的な持ち帰り方
ちなみに、鮎は氷締めして持ち帰る方がほとんどだと思いますが、その後の処理が分かれると思います(氷の入ったクーラーボックスに水を入れずに持ち帰ると苦悶死に近いので注意が必要です)。
氷水のまま持ち帰る方と、締めた後すぐに水を抜きジップロックなどに入れてガッチリ庫内を冷やしたクーラーボックスで氷に直接魚が触れないようにして持ち帰る方。
基本的に淡水魚の体内の塩分濃度は0.9%。
釣りたて新鮮な鮎でも、前者のように氷水に浸したまま持ち帰ると浸透圧の関係でぶよぶよと水っぽくなるのは致し方ありません。
そのため、後者のように一度氷締めした鮎をジップロックなどに入れ直し、キンキンに冷えたクーラーボックスで持ち帰る少しの手間が必要となります。
しかし、釣りが終わって疲れた「みらどり」はこの一手間が…
…のです笑。
塩水にする理由
そこで考案したのが「美楽締め(みらじめ)」です♪
あらかじめ体液より少し高めの3%の塩水をペットボトルに用意しておき、帰り際に鮎だけをクーラーボックスの塩冷水に投入するだけ!
−5℃保冷剤1250gをうまく使えば0℃前後の冷水をキープ出来るので、投入した鮎は暴れる暇も無くものの数分で締まるため鮮度を維持したまま持ち帰れます。
塩水に浸す理由は、体液(0.9%)より高めの3%の塩水に浸す事で、浸透圧によって魚の余分な水分が抜けて身が締まるからです。
多少でも鮎の香りが落ちる…のは否めませんが、家までの帰宅時間(2〜3時間)で帰宅後に塩焼きや、一夜干しの下処理も完了してしまいます。
これなら、あらかじめ塩水を用意したクーラーボックスに鮎をブチ込むだけですから、どなたでも簡単に鮮度をキープしながら塩焼きや一夜干しの下処理まで出来てしまいます。
淡水魚を塩で締めるのは賛否両論あるようですが、「みらどり」はこの方法で持ち帰った鮎の塩焼きが大好物です♪
魚の鮮度保持の基本
魚の鮮度を長時間維持するには、死後硬直をどれだけ遅らせるかが課題となります。
小型の魚ほど死後硬直に入る時間が早くなるため、適切に締めると共に温度を0℃付近で保管する必要があります。
表のデータは、ブランド鱒「富士の介」の貯蔵データですが、頭部殴打であれ、延髄切断であれとにかく即殺する事が死後硬直を遅らせると読み取れます。
鮎のような小型魚の場合、氷締めで即殺すれば同様のデータとなりますので鮮度保持の為にはなるべく死ぬ直前に暴れさせない事が大切です。
ATP(アデノシン三リン酸)と腐敗
魚にはATP(アデノシン三リン酸)という生きている間に呼吸によって作られるエネルギー元があります。
死ぬまでに苦悶死した魚(暴れるor呼吸が出来ない状態が長く続いた)はATPを消費し少ない状態となります。
死後にATPはうまみ成分であるイノシン酸に分解されるので、熟成させる魚はATPをいかに残存させるかが課題となり、神経締めなどを行う必要があります。
鮎の場合熟成の過程を経る事はありませんが、ATPが少ないほど他の細胞を分解しようとするので死後硬直が早く進んでしまうのです。
夕方にクーラーボックスに移した鮎が、数時間後の帰宅時に死後硬直が解けている場合には苦悶死したと考えて間違いないと思います。
また、温度が高くても同様に死後硬直が早くなるので、帰宅時のクーラーボックス内の温度も重要となります。
生かして持ち帰る
ATPは呼吸によって作られるので、生かして持ち帰るのが理想ですが代謝が激しく溶解酸素の要求度の高い鮎を持ち帰るのは一苦労です。
鮎を運ぶ容器の大きさと、入れる鮎の数のバランスや、水温上昇で必要な酸素量も増えるためこまめな水温チェックも欠かせません。
友缶程度の水量では、とても手間のかかる持ち帰り方法だと思います。
「みらどり」も一度やってみた事がありますが、20匹持ち帰り無事生きていたのは14匹。
6匹は苦悶死の為、身がダルダル…。
残りの14匹は風呂場で3日程度生かしておいたのですが、みるみるお腹がぺったんこになり、「美味しそう!」とはお世辞にも言えないお姿に…。
手軽に鮮度保持するには、釣り場で締める事が一番だと実感しました💦。
美楽締めのやり方
釣り場では鮎をブチ込むだけで済みますが、釣りに行く前に下準備が必要になります。
あらかじめクーラーボックスに塩水を入れておけば楽なのですが、保冷剤検証にもあるように氷や保冷剤を水に浸すと溶けるのが早くなってしまいます。
そこで、あらかじめペットボトルに3%の塩水を2Lほど作り冷蔵庫で冷やしておきます(常温だとクーラーボックスの温度を上げてしまう為)。
それを、現場でお昼ごはんのタイミングでじゃばじゃばと保冷剤に掛けておくだけ♬
帰る頃には0℃前後の塩冷水が出来上がっているので、水を切って鮎を投入して家まで持ち帰ります。
クーラーボックスの保冷力と、保冷剤の量のバランスが良ければ翌日の朝まで0℃前後をキープ出来ると思いますので下処理を好きなタイミングで行う事が出来るハズです。
おいしい塩はほんのり甘い
釣行前にあらかじめ3%の食塩水を準備しておきます。
2Lもあれば、18cm前後の友ごろ鮎なら余裕で50匹程度は浸せると思いますが、束釣り(100匹)される予定の方は4Lほど作って下さい笑。
「みらどり」は1Lでも十分間に合いますが、万が一を考えて毎回2L作っています♪
ちなみに、釣り場で川の水を使用する事も出来ますが、「みらどり」は安心・安全な日本の水道水を使用します。
川の水を飲むと「ピロリ菌」に感染する…という報告もありますので、怖くて水道水以外信じられません笑。
保冷力を落とさない為に
丸一日庫内温度を10℃以下にキープする為に、14Lの鮎真空クーラーに−5℃保冷剤1250gを2つ入れます。
また、水に浸ると保冷時間が約30%ほど短くなるので、ペットボトルで分別して持っていきます。
ちなみに、庫内に入れる食材はあらかじめ冷蔵庫で冷えているものを入れないと、氷や保冷剤が早く溶けてしまうのでご注意下さい。
お昼に塩冷水を作る
お昼になったら、クーラーボックスから食料や飲み物を出して、そのタイミングでペットボトルの塩水を保冷剤に流します。
クーラーボックスの保冷力と保冷剤のバランス(庫内温度)によりますが、1時間以内には0℃前後の塩冷水が完成します。
あとは夕方4時以降に鮎を入れるだけなので、それほど手間ではないと思います♪。
1分以内に暴れなくなる
夕方16時に鮎を投入した時の水温は-1.6℃でした。
この時は、投入後1分以内に全ての鮎が大人しく(お亡くなりに)なりました♪
氷に川の水を入れて締めていた時は、帰り支度が終わって車に乗り込んでも(約15分)クーラーボックス内で鮎が暴れる音が聞こえていましたので違いは歴然ですね!
あとは帰宅して塩焼き、一夜干し、翌日に炭火焼き…。
身が引き締まって鮮度バツグンの鮎をご堪能下さいませ♬
クーラーボックスの重要性
夏に差が出るクーラーボックスの保冷力!
どんなに優れた保冷剤を入れても、外気温が30度を超える夏場は断熱性能の差が鮮度保持に直結します。
鮎は足の早い魚ですので、出来れば帰宅時のクーラーボックス内の温度は10度以下にキープしたい所です。
氷、保冷剤の量にもよりますが、可能な限り高保冷クーラーボックスがおすすめです♬
詳しくはこちらの記事をご参照下さい👇
みらどり 最強の保冷力と言えるクーラーボックスは、極厚真空パネルを採用した釣り用クーラーボックスなのは間違いありませんが、アウトドアレジャーで使われるキャンプ用クーラーボックスと比較をしてみました。その結果、クーラーボックス[…]
鮮度抜群ならどう料理しても美味しい♬
最後に、「美楽締め」で持ち帰った鮎の当日、翌日、2日後に堪能した料理画像で締めくくりたいと思います。
魚釣りに求める事は、釣り味半分、食味半分の「みらどり」…家に帰って釣った魚を料理して食べるまでが釣りです♬
スローライフ・スローフードを満喫しています♪
軽く追い塩で炭火焼
持ち帰る段階で「たて塩」で塩味が薄く付いていますが、お好みで追い塩を振ってシンプルに塩焼きです。
程よく疲れた体に、鮎の苦味が心地よい…。
炭火焼きと干物に出来ない小型の鮎をメインで食べましょう♪
翌日は時間をかけて炭火焼
釣行翌日は、朝からじっくり時間を掛けて炭火焼きで楽しみます♪
炭の匂いと、鮎の焼ける香ばしい香りがまさにドーパミン直撃です!!
昼間っからお酒片手に…
と、思わずため息が出てしまうほど♪
串焼きろばたの詳細はこちら👇
みらどり 今回は「みらどり」が20年以上愛用している、キンカ「串焼きろばたコンロ」で焼く「釣りたての鮮魚」の炭火焼きをご紹介致します♬ いのた いいねいいねぇ!!釣った魚を家庭用のコンロやグリルで焼いても釣りたてなら美味しいけ[…]
一夜干しは晩酌のお供に
あらかじめ塩冷水で締めて持ち帰った鮎ならば、その日の夜に開いて冷蔵庫でピチットすれば、20時間後には極上の一夜干しが完成します!
3%の塩水なので、塩味が足りなければ焼き上がった後に「藻塩」を付けて食べれば美味しく頂けます。
保存食を作るなら塩鮭のように濃い目の塩水で水分を抜きますが、しょっぱくなりすぎると鮎の風味が損なわれ、美味しく食べられなくなります。
薄めに作って味見をし、味気なければ焼いた後に塩を足すのが正解だと思います♪
仕事から帰宅後に数枚の一夜干しを焼いて晩酌のお供にすれば、鮎が掛かった瞬間を思い出し…美味しいお酒が飲めること請け合いです笑。
詳しくはこちらの記事をご参照下さいませ👇
みらどり 入れ掛かりの出し掛かり!爆釣だぁ〜ꉂ(ˊᗜˋ*)♪と、ワンシーズンに1度くらいは言ってみたい「みらどり」です笑。今回はベテラン鮎師なら誰でも経験のある、釣れすぎて困った時に役立つ長期保存可能な「鮎の一夜干し」につい[…]
簡単でスマートな鮎の持ち帰り方【まとめ】
わずか数ヶ月で劇的に成長する代謝の激しい清流の女王「鮎」。
そんな足の速い鮎の最適な持ち帰り方をまとめると、
②クーラー容量に対して15%以上の保冷剤(-5℃保冷剤なら氷点下の冷水を作れる)を入れておく。
③お昼になったら塩水を保冷剤に掛けて、あらかじめ塩冷水の準備をしておく。
④川から上がったら水を切って鮎だけを氷点下の塩冷水に投入して即締めする。
⑤水を抜かなくても体液0.9%より濃いのでみずっぽくならずに身が締まる。
となります。
ポイントは、鮎を締める際にいかに暴れさせず氷締めし、ATPを減らさず死後硬直を遅らせる事が出来るかどうか。
さらに、空気の20倍も熱を奪える(熱伝導率が高い)冷水で内臓まで一気に冷やすという点です。
水を入れずに氷を直接魚体に当てればさらに熱を効率的に奪えますが、魚体が氷焼けしてしまうのでNG。
塩冷水なら、水に浸したまま持ち帰れるので痛みやすい内蔵ごと効率良く魚体の温度を下げることが可能になります♪
次の鮎釣りの際にはぜひ一度お試しくださいませ♪
最後までお付き合い頂き誠にありがとうございました!
(:D)┓ペコリンチョ
この記事で「みらどり」が愛用しているアイテムはこちら👇