種苗法による自家増殖(自家採取を含む)原則禁止とは
まずはタイトルにある「自家増殖(自家採種を含む)原則禁止」の理由は、日本のブランド品種が海外へ流出するのを防ぐ為…だそうです。
日本のオリジナル品種であるシャインマスカット(ぶどう)や、とちおとめ(イチゴ)、紅はるか(サツマイモ)などのブランド品種は、海外に流出し海賊版農産物として販売されています。
イチゴに関しては、中国・韓国で無断で栽培され海賊版いちごが逆輸入される事件に発展しました。
単純に、F1野菜を持ち帰り種取りしても同じブランド野菜はできませんが、果樹であるシャインマスカットは「成木から採った穂木を接ぎ木や挿し木」として利用すると簡単にコピー&増殖する事が可能です。
またイチゴも「親株のランナー」から同じ品質の子株を増殖する事は容易ですし、サツマイモに至っては「種芋」や「親株から採取したツル(穂)」から完コピ&増殖出来てしまいます。
知的財産権のように、これらのコピーを防止する為の法改正と言えます…タテマエ上は?!
自家採種を含むとは
自家採種しても同じ品質の野菜が出来ないF1種に限って言えば、種取り(自家採種)を禁止しても意味が無いように感じます。
種苗会社から買ったF1品種は、自家採種しても二代目は劣勢遺伝が強くなり品質が安定しません(後述のメンデル第二法則より)。
また今回対象となるのは登録品種に限るとありますが、その数は急速に増えているそうです。
つまりこの方改定により登録品種の割合が増えてゆくと、今まで自家採種してきた品種も今後登録(禁止)される懸念が拭えません。
誰が得をするのか…
ここからは「みらどり」の邪推ですが、海外流出防止というタテマエの裏には大人の裏事情が隠れているように感じます。
過去には米国のグローバル種子企業(種苗会社)のビジネスモデル(種子法廃止と自家増殖禁止のセット導入により農業従事者が高額な種を買い続けなければならなくなる)がありました。
ただちに日本が同じ事になるとは思えませんが、
…というのは間違いないように思います。
これまで未登録だった品種を登録し、自家採種出来なくしてから農家さんへ販売するビジネスへが生まれないとも限りません。
種苗を開発して販売する事業者の利益を増やすのが目的…だと考えるのは邪推でしょうか?
家庭菜園(自家消費目的)なら問題ない
今回の種苗法改正にあたって以下の農林水産庁の回答から自家増殖(自家採種を含む)はまったく問題無い事がわかります👇。
Q:家庭菜園(販売、譲渡を行わない場合)での登録品種の利用に影響が出るのではないですか?
引用元:農林水産庁 種苗法の改正についてより
A:今回の法改正では、登録品種であっても、収穫物の譲渡や販売を行わない自家消費目的の家庭菜園や趣味としての利用に影響はありません。
もちろん、F1種の野菜から採取した種ではうまく育たないので自家採取はあまり意味がありません。
しかし、ホームセンターのブランドミニトマト苗から脇芽を挿して自家増殖したり、同じく高級ブランドイチゴ苗からランナーで子株を増殖する事は可能です♬
もちろん増殖した苗を販売したり譲渡(有償・無償問わず)するのは違法※となるのでご注意ください。
※法改正後に書類送検された事例として、シャインマスカットを挿し木で増やしてメルカリで販売していた男性や、やよいひめ(イチゴ)苗を無許可譲渡した男性が逮捕されています。
種の種類
日本で販売されている種や苗のほとんどがF1種といわれる一代交配種となっているのは悲しい事実です。
今でも頑張って在来種(固定種)を絶やさないよう活動している種苗屋さんや、農業関係者もいらっしゃいます。
しかし広大な土地で作業し安定した収入を得ようと思えば、必然的に失敗の少ないF1種を購入するのは資本主義社会の縮図のような…。
どちらが正しいとか悪いという問題ではありませんが、
…という車好きの方もいらっしゃると思いますので、ざっくり種の種類について箇条書きしておきます。
固定種(在来種)
何世代も自然交配を繰り返し、自家受粉・他家受粉で遺伝的に安定している品種の種。
遺伝の法則(多様性)に基づく為、採取した種を蒔くと生育にバラツキがあり作物の大きさや形は揃わないのが特徴。
そのため、農家さんにとっては売り物にならない「規格外(食べられないわけではなく、売れない商品)」の野菜が交じるので収益性は悪くなる。
直売所などで不揃いの不格好な「味のある野菜」は、概ね固定種である事が予想出来ます。
メリットとしては収穫した野菜の味が濃厚であり、その野菜が持つ個性的な風味が強く出ていると感じる点。
また自家採種が可能なので、一度種を買ったら毎年繰り返し育てられるのでコスパに優れている点も見逃せません♬
在来種
ちなみに固定種の中に在来種が含まれます。
特定の地域で長年自家採種を繰り返し、その環境に適応するよう定着した固定種の事を在来品種と呼びます。
昔からその地域で長年自家採種で育てられてきた野菜は、ご当地野菜と呼ばれ固定種のブランド品種になるのが在来種。
家庭菜園でも、何年にもわたって生育の良い株を交配・種を採種し続ければ、
…が誕生するかもしれませんね♬
F1種(交配種・一代交配)
メンデルの法則(優性の法則)により、異なる性質を持つ親を掛け合わせると一代限りの優れた性質だけ併せ持つ「雑種第一代」が誕生します。
この雑種第一代を英語にすると、
…略してF1種子と言います(ファースト フィリアル ジェネレーション)。
特徴としては、甘い・色艶が良い・生育が早く高収量・特定の病害虫に強い…など、優れた性質を持つ種が作れる事(雑種強勢)。
これにより大量生産が可能になり、消費者にも農家さんにも良い事づくめのスーパー野菜が出来るというのが最大のメリットです。
さらに採種する全てが同様の遺伝的要素を持ち合わせており、生育も均一に揃うので出荷時にはほとんど「規格内(見た目が良く売れる野菜)」の商品となります。
F1種子のデメリット
デメリットはF1から採れた種を育てても、F2(二代目)は隠れていた劣勢の性質も現れる為(メンデルの分離の法則)、親とは全く異なる別品種が混じってしまうので自家採種が難しい点。
F2の種を蒔いても当然芽は出ますが、どんな性質を受け継ぐかはまさにギャンブル。
その為、毎年種苗会社からF1種やF1苗を購入し続ける図式が成り立ちます(=コスト高になりますが、種苗会社は儲かります笑)。
また供給元の種苗会社から世界中で育てられている品種が概ね同じ性質を持っている為、新しく発見された病害虫が蔓延した場合、最悪全滅する可能性も考えられます。
固定種ならば、それぞれ微妙に異なる性質を持つので僅かでも生き残った親同士が交配し、新種の病害虫に強い子孫が繁殖する事も可能です。
遺伝子組み換え種
時としてF1種の仲間と思われる事もありますが、F1種として流通している品種の中に遺伝子組み換えが行われているモノがあるので混同している…というのが正解な気がします。
前述のF1種はあくまでも同一野菜の異なる品種の交配(品種改良)です。
何世代にも渡り交配を繰り返しF1種を作る過程を飛び越えて、遺伝子を組み替えると一発で目的の性質を手に入れる事が出来るのが遺伝子組み換え種。
遺伝子組み換え種は、
…とも言われており、文字通り別種である他の生物(殺虫性を持つ昆虫)の遺伝子をとうもろこしに組み込むなど、とんでもない事をやらかしています!。
食の安全性
日本国内では研究開発以外で遺伝子組み換えの作物は栽培されていません。
ただし世界では遺伝子組み換えが主流となっており、主要生産国における遺伝子組み換え大豆栽培の割合は、アメリカ・ブラジルで総生産量の9割以上、カナダで8割以上を占めているのです。
その安全性は未知数ですが、大豆・とうもろこし・ばれいしょ・なたね・アルファルファ・パパイヤ・綿実・てんさいの計8種類が代表的な遺伝子組み換え作物。
上記農産物は日本国内で安全性審査を経て流通が認められていますが、遺伝子組換え表示義務対象食品となっているので流通量は限られています。
しかしその殆どを輸入に頼っている日本で、いずれ非遺伝子組み換えの作物が手に入らなくなる日が来るかもしれません。
趣味の家庭菜園くらい、固定種で育ててみたくなりませんか?
F1(一代交配)ミニトマトから種取りして育てた経過観測
実際にスーパーで購入したミニトマト SARA レッドプラム(F1)から種を取り育ててみました。
自家採種をするのにミニトマトは難易度は低いですが、市販のミニトマトや苗はほとんどF1種。
F2がどのような性質になるかはギャンブルですが、採れた種の中から生育の良い子だけを厳選して成長を観察してみます。
芽が出たばかりの見た目では、どのような性質が遺伝しているか全く分かりませんが趣味の家庭菜園なのでそれもまた面白いと思います♪
F1ミニトマトから種取り
とりあえずパッカーン
完熟してそうなミニトマトを切るといい感じ♪
スプーンでほじくって、残りは美味しく頂きます!
少し硬いミニトマトは不作…
同じパックに入っていたミニトマトですが、こんな感じのも混じっていました。コレはこのままお口へポイッ♪
ゼリー状の部分をスプーンで掻き出す
完熟っぽいミニトマトから発芽抑制成分があるとされるゼリー状の部分ごと種を取ります。種の大きさもマチマチですが、とりあえず全摘出!
何度も洗って種だけ残す
何度も流水で洗い、ゼリー状の部分はキッチンペーパーに擦り付けて完全に落とします。
保存する場合はこの後よく乾燥させ冷蔵庫へ。今回はすぐに発芽させたいので濡れたまま次の工程へ。
すぐに種まき〜芽がちょろり
すぐに種まき!
発芽容器にキッチンペーパーを敷きつめ、水で浸して種を置きます。ミニトマトの発芽適温は25~30度なので、春先ならコタツの中に入れます。今回は5月下旬だったので、画像の保温容器を屋外に置くことに。
わずか4日で発芽しました
たまたま気温が高い日が続き、2日で発根し4日目には葉が開いていました♪この時点で100粒中3粒のみ発芽しなかったので、発芽率は97%!!
しかし元気の良さそうなのは32粒だったので、生育が不揃いなF2種子の特徴を表しています。
プランターに移植
F2ミニトマトをプランターに移植
そぉ〜っとキッチンペーパーから根を抜き取り、プランター用土に移植。最初数本根が切れましたが、キッチンペーパーに水を浸して10分もするとスルリと抜けるようになりました。一番生育の良さそうな芽を12個選んで移植完了です!
定植後2日で元気になる!
さすが丈夫なミニトマト!定植後わずか2日でしっかり根が張ってピシッと茎が立ってきました♪どんなミニトマトになるか分かりませんが、ミニトマトはミニトマト笑。ウブ毛がかわいいです♬
種蒔きから10日で本葉がちょろ
種を蒔いた日から10日で本葉が出ている苗があります。しかし、この段階でも生育に差が見受けられます。
12個ある苗のうち、明らかに茎の細い軟弱な子が2ついました。この後間引きのタイミングでさらに選抜して行きたいと思います。
…絶賛育成中!成長とともに適宜追記していきます。
趣味の家庭菜園なら固定種(在来種)がおすすめ
家庭菜園ならそれほど大量に種や苗が必要になるわけではないので、コストを考えず育てやすくて美味しいF1苗を購入するのは必然です。
しかし一般的にスーパーで出回っているF1野菜なら、わざわざ手間ひまかけて家庭菜園で育てなくても良いと思うのは「みらどり」だけでしょうか?
栽培の難しい野菜はF1種の方が楽ですが(病害虫の耐性が高い)、食の安全性の観点から固定種にチャレンジしてみても面白いと思います♬
またいくら自家採種が容易な野菜でも、F1種であるなら意味がありません…。
とりあえず試しにチャレンジするなら、平安時代より栽培歴のある日本の伝統野菜である九条細ネギ(葉ネギ)からスタートする事をおすすめ致します!
リボベジでも簡単に成長するので、栽培も容易で自家採種も簡単なのが葉ネギの特徴です♪
一度種を買ったら一生収穫?!
固定種の良いところは、一度種を購入すれば毎年繰り返し何年でも収穫出来ること♪
品種によっては1年で種が劣化し発芽率が落ちるので、毎年栽培し種を更新する必要がありますが、葉ネギなら多少古くなってもなんとか栽培を続けられました。
納豆や豆腐の薬味として3本位欲しい時でも、根際5cm残してカットすれば1週間で元通り笑!
プランター1つ分の葉ネギがあれば、収穫したての新鮮な薬味がいつでも手に入りますよ♬
他にも固定種の種は色々あるので、ぜひ一度チェックしてみてください👇
種取り大人の裏事情【まとめ】
エフワンの
種をとっても
蒔くらーれん
みらぞう心の俳句
解説:F1から種を取って蒔いても、育てら〜れん(マクラーレン🏎)!という事を詠みました。
とりあえず、種苗法による自家増殖(自家採取を含む)原則禁止は、自家消費が目的の家庭菜園には関係が無いので安心して挿し木やランナーで株を増やせるという事でした。
ただし登録品種を自家増殖し、メルカリなどで販売したり、有償・無償を問わず譲渡する事は禁止されているのでご注意ください。
少しでも固定種に興味が湧いた方は、ぜひ一度だけ種を購入し何十年も自家採種して、
…を自家交配してみませんか?
延々と種取りを繰り返し、種の保存を孫の代まで受け継いでみてはいかがでしょうか笑♬
最後までお付き合いいただき、ありがとうごいました。
(:D)┓ペコリンチョ!