※保存期間はあくまで目安です。調理方法により異なりますが、「みらどり」は冷蔵庫で真空パックなら1ヶ月後でも美味しく頂いております。
一夜干しの基礎知識
日光と風で食材を乾かす天日干しと異なり、日光にあてない一夜干し。
一般的には風通しの良い日陰や、夜間に時間をかけて干す方法をさします。
天日干しより水分が多く残るので、焼き上がりもふんわりとした食感が特徴です。
また、日に当てない事で脂の酸化がし難く、熟成する分うまみが凝縮されるので、塩焼きより味が濃厚に感じると思います。
鮎をまるごと冷蔵・冷凍保存するより、痛む原因となる水分と栄養(血合いや内蔵)を取り除く分、おいしさをキープしたまま保存が効くのも一夜干しのメリットです。
内蔵を取ったら鮎じゃない?
鮎が好きな方の中には、
という方も多いと思います。
「みらどり」も、炭火で内蔵までしっかりと火を通した鮎が大好物♬
そんな「みらどり」でもご家庭のコンロで焼いた塩焼きなら、うまみが凝縮されている分「一夜干し」の方が断然美味しいと感じます♬
内蔵を取った一夜干しでも、鮎の香りはしっかり残っているので美味しく頂ける事請け合いです!
塩焼きとは一味違った、
な、一夜干しならではの味覚をご堪能して欲しいと思います♬
夏場は干物に適さない
ただし、干物に適した季節は温度が低くて空気の乾燥した冬場です。
前述した通り、食材が腐敗する原因は「水(湿気)・栄養・温度」の3つのポイントがあります。
お住まいの地域にもよりますが、夏は夜間でも20度を下回らず、湿度も70%を超えているのが当たり前。
どんなに新鮮な鮎でも、高温、多湿では上手に干されてくれません!
そこでご提案したいのが、浸透圧脱水シート「ピチット」を使用して、温度と湿度が一定のご家庭の冷蔵庫で作る「一夜干し」です♬
詳しい作り方は後述致しますが、ピチットを使用する事で単純に水分を飛ばすだけでなく、鮎の生臭みをとり、うまみを凝縮する事が可能となりました!
…になる絶品「鮎の一夜干し」。
まずは鮎を釣る所からスタートします♬
食材確保
鮎が釣れなきゃ始まらない( *˙ω˙*)و グッ!!
一夜干しにするなら、18〜20cmの友ごろ鮎が最適です。
ソレより小さいとパリパリの食感、大きいと水分が抜けきらず保存性に欠けるだけでどちらも美味しく頂けます。
真空パックして冷凍すれば1年は保存出来ますので、遠慮なく鮎をたくさん釣りましょう(遠慮する程釣れた事ありませんケド笑)♬
「みらどり」はトーナメンターでは無いので、難しい釣りは苦手です。
よって、どんなに遠くても、鮎がたくさん居る釣り人に優しい河川で竿を出す事にしています笑。
ホーム河川を決めず、馴染みの釣具屋さんの情報を頼りに「今年釣れている河川」を選択します。
放流・遡上も含めて、どんな有名河川でも2年好調に釣れ続ける事はないように感じるからです。
鮮度が命
鮎が釣れたら、クーラーボックスで持ち帰る所から「一夜干し作り」は始まっています!
魚のうま味を最大限に引き出すには、死ぬ間際にいかにATP(アデノシン三リン酸)を消費させないかにかかっているのです。
簡単に言うと、悶絶死(酸欠状態でバタバタ暴れて苦しみながら死ぬ事)させた魚はATPが減ります。
ATPは熟成によってうまみ成分イノシン酸に変わるので、一夜干しにした時のうまみが無くなってしまいます。
また、死後の温度を低く抑えることも鮮度を維持するポイントです。
持ち帰って処理する際、鮎の腹が裂けてしまうのは鮮度が悪い証拠。
一夜干しで焼いて食べるにしても、鮮度が悪いと決して美味しくならないので注意が必要です。
持ち帰り方
よって、超低温の塩冷水によって鮎を暴れさせず即締めすると、その後の熟成によってうまみ成分がたくさん残った美味しい一夜干しが完成します。
また、あらかじめクーラーボックス内を3%の食塩水にして鮎を浸けておくと、帰宅後の手間も省けて一石二鳥♪
鮮度をキープして持ち帰るには、
がポイントです。
鮎は盛夏の釣りだから…クーラーボックスの性能は鮮度保持に直結します。
詳しい鮎の持ち帰り方はコチラの記事をご参照下さい👇
みらどり 釣りたての新鮮な鮎なのに、いざ調理しようとしたら腹が裂けたり身がゆるくなったりしていた事はありませんか?特に鮎は足が速いので、締め方が悪く苦悶死した場合に腐敗のスピードが早くなるのが原因です。 わんだまん […]
一夜干しの作り方
それでは、具体的な一夜干しの作り方をご紹介致します。
タイトルにある「秘伝のレシピ」というほどの事はありませんが、鮎の持ち帰り方も含めて「みらどり流」と思って頂けると幸いです♫
慣れてしまえば、1時間ちょっとで30匹程度は処理出来ると思いますので、釣りから帰った疲れた体でもなんとかなります。
鮮度が命の一夜干し、当日に処理する必要があるので気張って行きましょう笑。
ハイアルコールで除菌
長期保存する干物や燻製を作る際、アルコール濃度約75度の食品用ハイアルコールスプレーは必須です。
干物や燻製の乾燥工程での失敗の多くは、わずかに付着した雑菌の増殖です。
また、夏場だけでなく冬でも生食用の食材を扱う場合に調理器具の除菌は必須になります。
冷蔵庫は、菌の繁殖を止めるのではなく抑制する温度です(冷凍すると雑菌の繁殖はだいぶ遅くなりますが止まるワケではありません)。
鱗を落とす
鮎の鱗はとても細かく落とさない人もいるようですが、元気な野鮎ほどゴリゴリに付いています。
実際に鱗を付けたまま焼いても、良く焼けばほとんど気になりません。
ただし表面のぬめりは生臭さの原因になるので、一夜干しの場合は包丁の先でジョリジョリと軽く擦って鱗と一緒に洗い流します。
鱗の大きな魚と違って、完璧に取らなくてもぬめりさえ取れれば問題ないのでササッと落としてしまいましょう。
背開きにする
鮎は骨が比較的柔らかいので、背骨に沿って軽く刃を入れるだけで簡単に開けます。
尻尾に刃先を入れ、頭に向かって軽く2回切るだけです。
この時点で身が裂けたり、柔らかく感じたら鮮度が落ちている証拠なので持ち帰り方を見直しましょう(クーラーボックス内の温度が高い可能性があります)。
頭を割る
鮎を立てて、頭を2つに割ります。
さすがに頭は少し硬いので、力を入れて真っ直ぐに包丁を落とします。
最後まで断ってしまわず、下顎一枚残す感じで途中で刃を止めます。
血と内臓を取る
あとは指で掻き出すように、エラや内蔵を取り去ります。
この時、歯ブラシで完璧に血を落とす方もいらっしゃいますが、そこまで完全に洗い流すと鮎の風味まで消えてしまいます。
むかしオトリ屋のおばあさん(姑)との会話の中で、嫁が歯ブラシで鮎を綺麗にみがいた一夜干しを、
と表現していたのを思い出します笑。
苔を食んで育つ鮎のフン=鮎独特の香り?に例えたのでしょう。
という事で、鮎の内臓は指先で適当に(軽く)流すのが正解だと思います♪
塩分濃度
鮎を無事開いたら、釣り場で鮎を締める為に漬け込んだキンキンに冷えたクーラーボックスの塩冷水の中に投げ込みます。
釣り場から家まで2時間以上漬け込まれ、開いてからさらに30分間放置します。
鮎のサイズや脂の乗り加減で塩分濃度の調整をするのは難しいので、うす塩(塩分濃度3%)で仕上げ、焼いた後に藻塩を付けて食べるのが「みらどり流」。
これなら、
という失敗を避けられます。
3%の塩分濃度なら、多少長く漬け込み過ぎても塩辛くなり過ぎる事はまずありません♪
ピチットでうまみ凝縮
下準備が出来た所で、いよいよ一夜干しに入ります。
大事な事なので何度も言いますが、夏は一夜干しに適さない季節です。
夏の魚である鮎の一夜干しには、温度・湿度を低くキープ出来る冷蔵庫と、浸透圧脱水シート「ピチット」を使って干すのがベスト!
ピチットの原理
ちなみにピチットとは、食品用半透膜の中に「水あめ成分」と「海草成分」を入れたモノ。
浸透圧で食材の余分な水分を吸収し、半透膜の分子選択性を利用した食品用脱水シートです。
水分(遊離水)や生臭み成分(アンモニア、トリメチルアミンなど)は分子が小さいので吸収され、分子の大きなうまみ成分(アミノ酸、核酸など)は素材に残り凝縮されるというモノ。
冷蔵庫の中にラップを掛けずに置いておくだけでも、水分は抜けて一夜干しにはなりますが、生臭みは取れず、最悪冷蔵庫が臭くなって怒られます笑。
コストは掛かりますが、鮎の一夜干しの相場は15枚入りで1枚約70円(ピチット レギュラー 32枚お得用なら1枚60円です)。
ピチット6枚で概ね30匹一夜干しが出来るので、1匹あたり約14円のコストです♪
試してみる価値はあると思いますが…いかがでしょうか?
水気を取って挟むだけ
では実際にピチットを使った一夜干しの作り方のご紹介です。
キッチンペーパーで軽く鮎の水気を拭いたら、あとはピチットシートに密着するよう挟むだけ。
18cm前後の鮎なら、1枚で3枚の鮎の開きが挟めます。
深型のバットに、ピチット1枚→鮎3枚挟む→挟んだ上に鮎3枚乗せ→ピチット1枚→鮎3枚挟む→…と繰り返し積んでいきます。
そうすることで、ピチット3枚で鮎15匹脱水する事が可能となります♪
冷蔵庫の温度・湿度
冷蔵庫がいかに干物作りに最適な環境であるか、このグラフからわかると思います。
ときおり相対湿度が80%を超えていますが、冷蔵庫を開けて温かい外気が入り、それが冷やされた事が原因。
庫内温度は平均6.6℃をキープし、相対湿度も平均40.5%と一夜干しに最適な環境です。
冷蔵庫なら、釣りに行った日の夜の気温や天候を気にしなくても、雨が降っても槍が降っても好きな時に一夜干しが出来るのでおすすめです♫
冷蔵庫で20時間
鮎をピチットに挟んだら、温度は熟成に最適な5〜10℃、相対湿度も40%前後をキープする冷蔵庫にて20時間保管します。
20時間後の鮎は、天日干しのように表面を触ってもカピカピに乾燥しておらず適度な弾力のある、
という仕上がりになりました♪
環境に左右されず、誰がやってもほぼ同じ品質の一夜干しが出来るところが最大のメリットです!
水分と生臭み吸収
一夜干しの場合、20時間で約10%の水分が抜けます。
表題の写真はピチットシート2枚が吸収した水分と生臭みの量です!
天日干しや、乾燥だけの通常の一夜干しと異なり、この中に生臭み成分も入っていると考えるとなんだか嬉しい♪
保存方法
次に、鮎の一夜干しの保存方法について。
基本的にはこれ以上乾燥しないよう、密封してから冷蔵庫OR冷凍庫にて保管します。
理想は酸化防止の為、真空パックするのが一番ですが、それほど使う機会のない場合は費用対効果でご検討下さい。
ジップロックで3日
水分と養分は一夜干しで抜いてあるので、これ以上乾燥しないようジップロックに入れ低温の冷蔵庫で保管すれば3日は美味しく頂けます。
「みらどり」は1周間後に食べてもぜんぜん問題ありませんが、一夜干しを作る際の環境や微妙な条件が異なるので3日としました。
どこのご家庭にも保存バックはあると思うので、3日で食べ切るならこの方法が一番コストが掛かりません。
冷凍するなら、鮎を入れたまま袋を水に押し込み、内部の空気を十分抜いて密着させればバッチリです♪
その場合、3ヶ月程度は美味しく食べられます。
真空容器で7日
手動・自動といろいろな真空容器がございますが、空気を減圧しても後述の真空パックのように密着しないので保存期間は7日間程度。
内部の空気を抜くことで食材の酸化を防止し、湿気を取り除くことにより雑菌の繁殖を抑制します。
メーカーによって保存期間の記載はまちまちですが、鮎の一夜干しなら減圧さえ出来ればジップロックよりは長持ちします。
手動の場合、フタを開ける度に減圧作業が面倒ですが、1周間保存出来れば何度でも使える真空保存容器もアリだと思います。
冷凍可能な容器なら、このまま冷凍庫で保存すれば6ヶ月は鮎の一夜干しが美味しくいだだけますョ♪
真空パックで14日〜365日
専用の器械が必要で、真空パック対応袋のランニングコストを考えるとかなりお高い真空パック器。
保存性は一番で、鮎の一夜干しなら14日は余裕で持ちます。
「みらどり」は真空パックに絶大な信頼を抱いているので、1ヶ月後の一夜干しでも余裕でイタダキマス(自己責任ですケド)♫
釣りを趣味にされているなら、1台あると使い道は色々あると思います。
ただし、専用袋のコストがバカにならないので貧乏性の「みらどり」は真空パックを簡単に破ることが出来ません笑。
この状態で冷凍保存すると、一夜干しなら2年後でも頂けますと記載があります(流石に恐いので1年以上保存した事はありません)♫
メーカーによっても保存期間は異なりますが、安価なものでも雑菌の繁殖は確実に抑えられるのでおおよその目安としてご参考になさって下さい。
美味しい焼き方
一夜干しが完成したら、あとは焼くだけ♫
炭に火を熾して…が理想ですが、適度に水分を飛ばしているので普段使っている魚焼き器でも、炭火で焼いた時のような「外パリ中ふわっ」の美味しい焼き加減が再現出来ます。
ただし、水分の発生するガスコンロだけは注意が必要です。
ガスコンロ
ガスの主成分はメタン、プロパン、ブタンなどがあり、どれも燃焼すると酸素と結合して水が生まれます。
せっかく水分を飛ばしてパリッと焼き上げたいのに、しっとり仕上がっては本末転倒です。
一夜干しだけは炭火と同じ様に遠赤外線で食材に熱を入れるフィッシュロースターがおすすめです。
魚焼きロースター
各社色々なフィッシュロースターが販売されておりますが、ポイントは「両面焼き」と「遠赤外線」です。
いつでも手軽に炭火焼きと同じ遠赤外線で一夜干しが焼けます♫
ひっくり返す必要のない両面ヒーターもあると便利。
皮を下にして焼けば、鮎の脂が落ちにくく噛むほどに滲み出るうま味に打ち震える事でしょう笑。
もちろん、通常のヒーターでもガスのように水分は含まないので十分美味しく頂けます♪
炭火焼き
圧倒的な高火力と、炭から出る煙の香りが鮎の一夜干しに+1の風味を与えてくれます!
炭火を眺めながら一杯やる至福の時間…
時間がある時は午前中から火遊び(炭熾し)してお酒を嗜む不良中年「みらどり」です笑。
食べ方
立て塩(塩分濃度が3%程度の塩水)に浸けるので、出来上がりの一夜干しはごくごく薄く仕上がります。
過去に何度も塩っぱすぎて鮎の味がわからなくなったので、今はどんな干物も薄めに作ることにしています。
プロは鮎の大きさや脂の乗り加減で5〜10%と変えるとありますが、素人干物は3%固定が失敗しない塩分濃度だと思います。
藻塩を後付け
立て塩に使用するのはミネラル豊富な「あら塩」ですが、焼き上がった鮎に付けるのは絶対「藻塩」が最適です!
藻塩を舐めてお酒を飲む人が居るほど海藻のうまみを感じられる「藻塩」。
食卓塩のような電気分解で作られる、高純度99%の塩化ナトリウムとは根本的に異なりますので、気になる方はこちらの記事をご参照下さい👇
みらどり 鮎の塩焼きに使う塩にこだわりはありますか?「みらどり」は、20年かけて色々な塩を試してきましたが、たどり着いたのが藻塩です。藍藻類(らんそう)を主食にする鮎だからこそ、海藻(かいそう)成分の含まれた藻塩(もしお)と[…]
鮎釣り師必見!鮎の一夜干し作り方【まとめ】
保存性を上げるだけでなく、人によっては炭火焼きより美味しいと感じる鮎の一夜干し。
釣れすぎて処理に困った鮎を、そのまま冷凍庫にブチ込んで食味を落とす前に…。
ぜひ一度、冷蔵庫でピチットを使って極上の鮎の一夜干しを作ってみていただきたい♪
ポイントは次の通りです👇
●ハイアルコール除菌は保存食の基本!全ての調理器具を除菌!
●鱗と一緒にぬめりを落として生臭み軽減!
●背開きで内蔵を抜く。綺麗に処理しすぎると鮎の風味も落ちるので注意!
●塩分濃度は3%に固定!うす塩に仕上げて、藻塩で食べる!
●軽く拭いてピチットで脱水!生臭みをとり、うまみを凝縮!
●乾燥工程は温度・湿度の安定する冷蔵庫で20時間!
●保存は冷蔵庫で3日〜1ヶ月。冷凍庫で3ヶ月〜1年が目安。
●焼き方はガスコンロ<両面焼きフィッシュロースター<炭火!
●焼いた後に藻塩で食べれば120点!
…なんだかゴチャゴチャと書きすぎましたね💦
とりあえず細かい事は抜きにして、最初はピチットを使った「鮎の一夜干し」を作るだけでも美味しさが伝わると思います♪
…ぜひ一度ピチットしてみてはいかがでしょうか?
最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました!
(:D)┓ペコリンチョ。