刺し身が一番美味しい瞬間
釣りたて新鮮なお魚が食べられるのは釣り人だけの特権…ですが、お刺身で食べる場合「コリコリ」した食感が味わえるだけでうまみ成分はまだ生まれていません。
うまみ成分であるイノシン酸は、死後の時間経過(熟成)と共に徐々に増えていくからです。
よって、魚が一番美味しい瞬間は、締めた直後より死後硬直が始まり完全硬直するまでの「活け魚」と呼ばれる間です。
その後、硬直が解除され身の軟化が始まる「鮮魚」を経て、嫌な臭いを醸し出す「腐敗」へと進みます。
ATP(エネルギー) | うまみ成分 | 呼び方 | |
①ファイト中 | 消費される | ||
②水中キープ | 呼吸で回復 | ||
③死亡 | 神経締めでキープ | 少しづつ変換 | 活け魚 |
④死後硬直スタート | 減少 | 増加 | 活け魚 |
⑤完全硬直 | 最大 | 活け魚 | |
⑥硬直解除 | 徐々に減少 | 鮮魚 | |
⑦軟化 | 減少 | 鮮魚 | |
⑧腐敗 | 廃棄 |
適切に締めた場合の食べ頃
死んだ魚は時間の経過(熟成)と共に死後硬直へと向かいます。
上の表は、山梨県養殖漁業協同組合によるブランド鱒「富士の介」の鮮度保持に関する研究結果です。
ニジマスの大きさや種類によって若干の違いが生じると思いますが、世間で言われている熟成期間と概ね一致します。
簡単にまとめると、
●苦悶死ではなく、頭部殴打・延髄切断などにより即殺処理を施す。
●4℃前後の冷蔵保存が最適。
●これにより約36〜48時間後に生食での食べ頃(死後硬直がピーク、K 値が 20%前後)を迎える。
となります。
釣行当日の夕方に魚を絞めた場合、食べ頃は2日後の朝から夕食(36〜48時間後)となりますね♪
ただし、魚のサイズが小さい場合はもっと早く熟成のピークを迎え、冷やす温度が低すぎても死後硬直が早くなるので注意が必要です。
最適な締め方
うまみ成分イノシン酸に変換されるエネルギー源ATPは、締め方が悪いと死後も消化されてしまいます。
つまり、うまみ成分の元が無くなってしまうので、どんなに熟成期間を設けても美味しくならないので注意が必要です。
釣ったばかりのニジマスは、エネルギーであるATPを消費してヘトヘトです。
生きていれば呼吸によってATPは補給されるので、スカリなどで水中キープして体力を回復させてから暴れさせずに即殺する事が重要となります。
これが一番最悪です!
キンキンに冷えたクーラーボックスに入れても、冷水を好むニジマスはしばらくバタバタと暴れていると思います。
また、釣り場からさばき場までが遠く、スカリの中でバタバタ暴れさせながら移動しなければいけない時も、後述する脳締めで即殺し動きを止める事がポイントです。
それでは、具体的な「美楽式」の方法を順を追ってご紹介致します♪
活け魚を手に入れろ!
今回ご紹介するニジマスの熟成方法は「釣り人限定」です。
スーパーで販売している「鮮魚(ニジマス)」では、決して熟成は出来ませんのでご了承下さいませ。
自分で釣り上げた「活け魚」を、釣り場で下処理する所がスタート地点です♫
当然管理釣り場に出かけても、確実に赤身の良型ニジマスを釣らなければ熟成魚の美味しさを味わうことは叶いません。
参考までに「みらどり」イチオシのブランド鱒が高確率で釣れるフィールドをご紹介致します。
釣れたら赤身確定!?「フォレストスプリンググループ」
フォレストスプリンググループさんは、林養魚場のメイプルサーモンと同系統のブランド鱒を放流している優良管理釣り場です。
なかでも「みらどり」お気に入りの白河フォレストスプリングスさんは、林養魚場にほど近く魚影も抜群。
大型ニジマスメインなので数を釣ろうと思えば難しいフィールドですが、小学生・女性専用のシャローエリアなら必釣ルアーを駆使すれば1匹は赤身をゲットできると思います♫
詳しくはコチラの記事をご参照下さい👇
※2023年10月時点の白河フォレストは、物価高の影響か非常に厳しい状況に追い込まれております...。魚影や魚のサイズはブログ公開時点(〜2019年)のモノである事をご了承下さい。また、女性・子供専用エリアは以前より釣れなくなりましたが、[…]
一日粘ればいつかは甲斐サーモン「小菅トラウトガーデン」
こちらは高確率で釣れる…という訳ではございませんが、養魚場直営だから魚影は抜群!
浅くて狭いエリアに、甲斐サーモンもかなりの数が入っていました。
攻略法といえるかどうか分かりませんが、過去に実績のあるルアーを一日投げ続ければいつかは釣れるハズ…(当たり前ですケド笑)
詳しくはコチラの記事をご参照下さい👇
みらどり 行ってきましたよ♪甲斐サーモンが釣れる「小菅トラウトガーデン」さんへ。山間の隠れ里のような小さなエリアですが、養魚場直営だから魚影抜群!ルアーをうまくキャスト出来ないお子様でも十分釣りになる「みらどり」おすすめの優[…]
頂鱒の聖地川場「キングダムフィッシング」
頂鱒の養魚場「神山水産」から車で約30分(17km)に位置する川場キングダムフィッシングさん。
一番のポイントは、
と、公式HPに明記されている事です♫
熟成してお刺身で食べるには、40cm以上のニジマスが最適なのですが、30cm位の魚でも24時間熟成なら美味しく頂けます。
詳しくはコチラの記事を御覧くださいませ👇
みらどり こんにちは!釣った魚は美味しく食べる♬キャッチアンドイート派の「みらどり」です。今回は、管理釣り場でブランド鱒が釣れた際の美味しい食べ方を徹底検証してみたいと思います。 わんだまん ブランド鱒なんて所詮「[…]
初心者でもチャンスあり!「日本イワナセンター」
ブランド鱒ではありませんが、初心者に優しい日本イワナセンターさんも40cm以上の赤身放流強化中です(2022年7月より)。
市販のフェザーは使用可能(自作フェザーと、ネオスタイル、ハートデザインは禁止)。
9個ある持ち帰り可能ポンドは、水深も浅く狭いのでレンジを刻む必要も遠投の必要もないのでお子様でも釣りになります♫
ルアー初心者・入門者応援宣言を謳い文句に、数釣り上級者に規制をかけるナニカと話題のエリアです笑。
少々クセはありますが、手軽に赤身をゲットするなら「日本イワナセンター」さんが一番イージーかもしれませんね♪
魚の熟成方法
「美楽式(みらしき)」と言っても、元ネタは、天下の「津本式」究極の血抜きによる熟成魚の理論です。
相違点は、魚の販売に携わるプロが求める究極の熟成方法(7日以上)と、一般人が自宅で食べる為だけに釣り場で処理する方法(2、3日)の違いとなります。
商品価値を損なわないよう、美しく魚を捌く必要もないので津本式の手法を極力簡略化し、誰でも簡単に再現出来るように致しました。
腐敗の原因は「水・栄養・空気」
食品の腐敗を早める原因は、水分と栄養(血・内蔵)と空気による微生物の繁殖です。
津本式究極の血抜きはホースで腎臓に大量の水を送り、血管を水流で圧迫する事で魚の血を高い精度で除去する方法。
切断した尾から津本式ノズルで水を抜くのも(動脈流し)、長期熟成するのに欠かせない栄養(血)の完全除去を目的にしています。
さらに、脱気と低温で微生物の繁殖を抑制し、長期間の熟成を可能にする究極の熟成魚の仕立て方になります。
簡易バージョン「美楽式」
対して美楽式は、一般的な魚の締め方・血抜き・さばき方に、脱気・密封を釣り場で行うというモノ。
重要なポイントはいくつかありますが、大きく異なるのは⑨脱気・密封のタイミングだけ♫
②エラ膜切り
③尾の切断
④神経締め(重要)
⑤血抜き
⑥頭部・内蔵処理
⑦鱗・ぬめり除去
⑧吸水
⑨脱気・密封(重要)
⑩温度管理
この簡易バージョンでも、3日程度ならまったく臭みは発生致しません。
最長7日まで熟成させましたが家族全員「お腹を壊す」事もなく、今現在この記事を元気一杯書いております笑。
10項目もありますが、ニジマスをさばいた事のある方なら実際にやる事は対して変わりません。
重要なのは、 ①の脳締めをやるタイミングと、④の神経締め、そして⑨の脱気・密封です。
やり方
それでは各項目ごとの具体的なやり方のご紹介です。
殆どの項目は魚をさばいた事のある方なら、一度はやった事があると思いますが、タイミングと順番が大切です。
ポイントは、見た目を気にせず頭も含めて腐敗の原因となる不要な部位を全て除去する事。
脱気・密封までを釣り場で全て行うので、家に帰ったらキッチンペーパーを交換して冷蔵庫のチルド室(0〜2℃)に投げ込むだけ♪。
2、3日後に取り出し、3枚におろしてお刺身にする際に、ゴミは皮と骨だけなのでキッチン周りの臭いも最小限に抑えられます。
捌いた後に臭いが気にならない=腐敗せず熟成している証拠です!
①脳締め
脳締めは、水から上げたら暴れる前にすぐに行います。
釣り場からさばき場までが遠い場合は、生かしたまま移動したり、そのままクーラーボックスに入れるのは厳禁です。
脳を直撃すればさほど血を流さず即殺出来るので、うまみ成分に変わるATP(エネルギー)を消費する事が無いので熟成した時に差が出ます。
一発でキメるのは慣れが必要ですが、何度か刺してグリグリすれば必ずヒットする事が出来るでしょう。
脳締めした時ニジマスが、
…という表情をしたら成功です笑。
②エラ膜切り
血抜きの基本である背骨の下にある腎臓を切、動脈を切断して血が抜けやすくします。
津本式ではホースで水を流すのですが、流水で魚体をフリフリ(曲げる)するだけでも十分血が抜けるので普通に切ればOKです。
③尾の切断
津本式では尾を最後まで断つ事はなく、皮一枚繋げていますが自分で食べる為に行う美楽式はゴミを減らす意味も含めて釣り場に置いてきます。
魚体のヌメリも臭いの原因になるので、尾びれのヌルヌルは付けておく必要はないからです。
傷口が少ない方が腐敗は防げますが、最後に脱気・密封するのでソコまで気にする必要はないと思います。
包丁やナイフで尾を断とうと思うと、まな板が無いと難しいですね。
使い慣れない包丁より、誰でも扱えるマルチハサミで処理するのが美楽式です♪
④神経締め
脳締めしても、背骨の上にある神経を破壊しないと死後もATPを消費してしまうので、熟成させる場合はどのような方法でも神経締めは必須課題です!
理想は津本式コラボ「究極の血抜きポンプ」ですが、美楽式では使いません。
試しに仲間の津本式ポンプを借りて、究極の血抜きをした魚と神経締めをした魚を食べ比べましたが…
同様の理由でルミカの鉄砲ウオでも神経締めと動脈流しをやってみましたが、本家より明らかなパワー不足!
それでも、神経締め・動脈流しは出来たようで、ワイヤーで神経を破壊した魚と同等の熟成加減でした。
通常のワイヤー式神経締めが手軽で一番
水を使って神経締めや動脈流しなどが出来る前述の方法は悪くないのですが、手間と荷物の割には効果が実感出来ないので、美楽式はワイヤーを使用します。
安価なモノから形状記憶ワイヤーを使用したモノまでありますが、使いやすいモノでOKです。
大型ニジマスにも余裕で対応可能な、ルミカ神経締めSET MEDIUMが使いやすいと思います。
⑤血抜き
血抜きは「腐敗」と「生臭さ」、「うっ血」を防ぐ事にあります。
内蔵や血は栄養豊富で、腐敗性微生物の温床となるので、いかに効率よく血抜きを行うかが、熟成の成功率アップには欠かせません。
究極は津本式ですが、水道の水をバケツに張って魚体をフリフリ曲げる従来の方法でも十分血は抜けます。
締めてから時間が経った魚の場合、血が凝結してこれだけでは細部の血が抜けないのですが、まさに「今」締めたてホヤホヤの魚ならまったく問題ありません。
水を入れるバケツが無ければ、強めの流水で丁寧に腎臓・動脈付近の血を流すだけでも十分血は薄まります。
究極は津本式ですが、そこまでしなくても2、3日の熟成なら十分美味しくなるのでご安心下さい♪
⑥頭部・内蔵処理
腐敗しそうな部位は徹底的に取り去るのが美楽式です!
家に帰ったら冷蔵庫のチルド室で熟成させ、食べる直前に皮をひいて3枚におろすだけなので、生ゴミもほとんど出ずに楽ちんぽん♪
今までは、食べないと分かっていても傷口を減らすため頭や尻尾を付けたまま持ち帰っていたのですが、脱気・密封が前提の美楽式なら傷口の心配は不要になりました。
船釣りでは内蔵を海に捨てるのは不法投棄になるそうですが、管理釣り場のさばき場には大抵「魚用のゴミ箱」が設置されているので安心です。
⑦鱗・ぬめり除去
家に帰ってからやると一番怒られるウロコ取り…。
臭いの原因でもあるので、鱗と一緒にヌメリも完全に落としましょう。
鱗を落とすのに、金タワシをさばき場でお借りする事が出来るエリアもありますが、個人的には使い慣れた道具が一番効率が良いように感じます。
専用の鱗取りも持っていますが持ち物が増えるので、今は1本でマルチに使える津本式マルチハサミで全て処理しています♪
⑧吸水
キッチンペーパーで身全体の水分を軽く拭き取ります。
その後、腹部分を少し厚めにまるめて、全体を覆うようにキッチンペーパーで包み込んで下処理は終了です。
この後減圧する事により、身の内部の水分も効率よく表面に浮き上がるので津本式で言うところの「立てかけ」工程(重力による水抜き)は必要ありません。
※究極の血抜きを行わないのでそもそも必要ありませんが、熟成させるのに余分な水分を抜くのは必須です。
家に帰ったら、1、2回キッチンペーパーを交換するだけで余分な水分が抜けるので、身はかなり締まるようになります。
現場でここまで処理すれば臭みはほとんど発生しません。
コストのお高い浸透圧脱水シート「ピチット」を使用しなくても、安価なキッチンペーパーだけで十分脱水可能です♪
⑨脱気・密封
食品が腐敗する原因である、水・栄養(血・内蔵)を取り除いたら最後は空気です。
従来は家に帰ってから、食品用真空パック器で処理しておりましたが、釣り場で行うと身持ちが違います!
また、真空パック器の最大のネックだった専用ロールのコストも抑えられますね♪
何度も使うのは衛生的にどうかと思いますが、クーラーボックスに魚を入れるのと一緒で、使い終わったら水洗いしてアルコール除菌すれば問題ないと考えています。
たかが一枚300円程度ですが(吸引用ポンプ付は@500円)、貧乏性の「みらどり」は穴があくまで使う予定でいます笑(ポリエチレン100umなのでそうそう破れませんケド)。
おさかな圧縮袋のコツ
ちなみに、おさかな圧縮袋には真空パック器の専用ロールのような空気の抜ける溝がありません。
吸引口付近に何も無いと、袋同士がピタッと密着してうまく脱気出来ないのでお気をつけください。
少しでも対象物に触れていると、ガンガン空気が抜けていきます。
手動なので労力はかかりますが、力加減次第では真空パック器より減圧できます。
ただし、やりすぎると身がペチャンコに潰れてしまうので適度な脱気加減が必要ですケド笑。
⑩温度管理
ここまできたら、最後はクーラーボックスに入れて低温で持ち帰ります。
冒頭部分の鮮度試験では、締めた後は4℃で保管するのが一番良いとの事でしたね。
保冷剤の種類やクーラーボックスの断熱性、季節ごとの外気温に影響されますが、鮮度を保つには低温をキープする必要があります。
ただし、家に帰れば温度の安定した冷蔵庫のチルド室に入れるので、帰宅までの時間が短ければさほど気にする必要はないかもしれません。
ご参考までに保冷剤とクーラーボックスの記事はコチラ👇
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熟成期間の目安
うまみのピークと安全性を考慮すると、熟成させる期間の目安は概ね2日〜3日となります。
ためしに美楽式で7日間熟成させたニジマスを食べてみましたが、臭みはありませんが身クズレは否めませんでした。
この方法だと、数日で臭みが出た事は一度もありませんでしたが、万が一嫌な臭いがしたら即処分して下さい。
菌の繁殖を抑えるだけで、冷凍しない限り止める事は出来ないからです。
魚の処理方法やコンディションによって腐敗しやすい原因菌が付着してるかもしれませんので、あまり長期間の熟成は得策ではありませんね。
翌日でも十分熟成魚の美味しさを感じられますので、半身ごとに熟成時間を変えて食べ比べても面白いと思います♪
3枚におろして実食
釣りから帰った翌日からは、晩酌が楽しみすぎて仕事が手に付きません笑。
釣り場で下処理しているので、3枚におろしてもゴミは皮と骨しか出ません♪
また、不器用な「みらどり」はハラミと中骨付近に身がごっそり残ってしまいます…。
もったいないので、クレイジーソルトを強めに振ってロースターで焼き、お酒のアテにちびちびつまんで食べています♫
釣りから帰ってもしばらくは、
と、釣りの余韻が続きます笑。
釣れた赤身トラウトを熟成させる方法【まとめ】
釣り味半分、食味半分の「みらどり」です。
釣り場で下処理を完璧に行うには、釣りをする時間が少し減ってしまうのが最大のデメリット。
慣れてしまえば、それほど時間はかかりませんが、閉園間際だとさばき場が混雑するのでタイミングを見て早めに処理する必要があります。
…それが問題です笑。
熟成させたニジマスのうまみに興味のある方は、ぜひ一度お試し下さいませ♪
最後までお付き合いいただき、誠にありがとうございました!
(:D)┓ペコリンチョ