家庭菜園における施肥(肥料を与える)について
趣味で家庭菜園を10年以上やっていると、実に様々な肥料を使ってきました。もちろん表題にあるような「無肥料」での栽培も試したことがあります。
「奇跡のリンゴ」に感化され、炭素循環農法や、ハル(Halu)農法、自然栽培、自然農法と呼ばれているものを趣味の範囲で実践した経験もあります。
しかし、素人が手を出すにはどれもとても難しく全部大失敗。そもそもサラリーマンの片手間に庭でプランターで野菜を育てるレベルではそう簡単に再現できるはずもありません。
また、単肥、複合肥料、配合肥料、化成肥料(無機質肥料)、有機肥料、固形肥料、液体肥料、堆肥(特殊肥料)、ぼかし肥料、緩効性肥料、遅効性肥料、速効性肥料と、実に様々なものがあります。
さらにその与える量や時期など、本業の農家さんのように「経験からくるさじ加減」なんて10年以上やっても未だに分かりません。
でも、肥料を過剰に与えるくらいなら与えない(無肥料)方がまし、逆にまったく与えないと(特に肥料切れ)小さく育ってそれはそれで軟弱に育つ事はようやくわかるようになりました。
趣味の家庭菜園の適切な肥料(適肥)がどんなものかを理解する上で、農学博士・元東京農業大学客員教授 渡辺和彦氏の「人を健康にする施肥」はとても勉強になりました。
「少ない肥料投与で環境負荷を少なくし、かつ生産力を低下させずに持続的な農業生産をいかに実現できるか」。これが、21世紀の肥料・植物栄養学の大きな課題とされている。20世紀の農業が、化学肥料や農薬の使用により単位面積あたりの農作物収量を飛躍的に増加させ人口急増にみあう食料供給に貢献した反面、過剰施肥による農地の劣化や水質汚染などの環境問題を世界で広く引き起こし反省を強いられたからだ。適切な肥料(適肥)を適量、適期に適切な場所に施用する「4R施肥推進運動」を推進すべきことは言うまでもない。農地のどのような場所にどのような肥料をどのような形で施肥したら一番効果的に高品質で、安全安心な農作物をつくることができるか、という研究も欠かせない。
出典:著書名「人を健康にする施肥」 監修者「農学博士・元東京農業大学客員教授 渡辺和彦」 出版社 「全国肥料商連合会; 改訂第2版」 一般財団法人 全国肥料商連合会HP 監修者まえがきより
本格的な内容はこちらの著書をお読みいただくとして、「みらどり」が10年趣味で家庭菜園を実践して感じた具体的な家庭菜園の施肥をご紹介したいと思います。
肥料の過剰施肥が一番野菜の被害が大きい!
4種類の活力液(即効性)の葉面散布の実験の際に、Aの活力液だけ見事に虫に狙われた。B、C、Dは別の活力液で、Eは葉面散布無しの株です。
毎年家庭菜園でミニトマトやニラ、オクラやラデッシュなど数種類の野菜を育ててきましたが、とにかく病害虫にやられやすいのは肥料がガツンと過剰に効きすぎた株です。
実体験からくる感覚ですが、特に葉肥えと言われる植物の葉や茎を大きくする「チッ素成分」が多いとグングン成長して見た目は元気で旺盛ですが、その後病害虫で枯れるのが早くなります。
利潤追求する農家さんは、単位面積当たりの収量を増やす為、ガツンと早く大きく育てるために高度化成肥料(肥料に含有する肥料成分(窒素・りん酸・加里)の合計が30%を超す複合肥料)を使用しますが、その分農薬もしっかりと効かせます。
当然仕事ですから、毎日野菜や畑の管理が出来るのと、堆肥などで土地が痩せないよう完璧に土壌環境も維持しながら栽培します。
しかし、休日しか畑に行けなかったり、一日数十分しか手入れ出来ない趣味の家庭菜園であれば、肥料を過剰に与える事は招かれざる客(病害虫)を呼び寄せることと同義です。
使い切れないチッ素成分は、虫やウィルスの餌となります。光合成の出来ない梅雨時に肥料を与える事も過剰施肥となるので注意が必要です。
固形肥料は水やりで肥料成分が溶け出し(移動し)根にあたるので、必要以上に元肥が効いてしまうので、可能であれば雨が続く時はプランターなら雨のあたらない所に移動するのがおすすめです。
過剰施肥と農薬はセットなので、家庭菜園でも大量に収穫したい方以外は栽培が難しくなるのであまりオススメ致しません。
また一般的に「野菜の育ちが良い」事が商品のリピート率につながるので、元肥入の培養土や肥料の裏書きにある施肥量は多めに記載されている事が多いのでこちらも要注意(商売ですから・・・)。
直接的に過剰に施肥していなくても、間接的に多く与えてしまう事もあるので極力少なめに施肥する事が家庭菜園の成功の秘訣だと考えます。
この間受けた健康診断でも「肥満が病気の根源だ・・・」とお医者様がおっしゃっておりました。野菜も人間も、栄養を取りすぎるとろくな事がありませんねm(。>__<。)m
無肥料栽培はやり甲斐はあるが難しい!
極端な話、一般的な慣行農法に習って説明される家庭菜園の教科書通り、過剰施肥気味の栽培法で失敗したので、いきなり無肥料栽培に挑戦した経験があります(´>∀<`)ゝ
人間の言う「肥料」と呼ばれるものを一切与えていない森や林の木があんなに大きく成長するんだから、無肥料でも栽培は可能だ!!と完全に感化された時期が2年ほどありました。
作物の種類・品種の影響や、本来植物が持つ共生微生物との関係、土壌物理性との関係が複雑に絡み合い生態系を維持しているので、特に「みらどり」が挑戦したプランター栽培では再現出来ませんでした。
また、もともと肥料分を多く必要としない野草ですら、土壌環境が悪いとそれに応じて自身の茎・葉の大きさを小さくして、こじんまりとした姿形を保ちながらミクロの実を付け子孫を残しています。
収穫が前提の野菜の栽培となると、これでは「成功」とは言えませんよね。ただし、過剰施肥より明らかに病害虫にやられ難く、最後まで枯れずに栽培期間が長くなります。
この小さく成熟していく姿は、趣味の家庭菜園であれば「成長過程を長く楽しむ」事として受け入れられるので「みらどり」的には過肥より無肥と考えます(๑•̀ㅂ•́)و✧
また、一般的に肥料と農薬がセットのように、無肥料栽培と無農薬栽培はセットで考えられています。過剰なチッ素を与えなければ、病害虫にやられ難い(注:やられない訳ではない)のでこの図式が成り立ちます。
肥料をガンガン与えるより、明らかに成長は遅く、葉・茎も小さくなりますが、その分実は甘く栄養価も高いことも知られています。
「植物」はどんなに環境が悪くても、自分からその環境を抜け出すことは出来ないので「動物」に甘い実を食べてもらい、子孫を別の場所に移そうとするそうです。
樹ボケ(チッ素肥料のやり過ぎなどで、樹(株)が茂り過ぎて実をつけ難い状態)したミニトマトの実はあまり美味しくありませんが、ひょろひょろと茎が細く葉も小さめのミニトマトの実は「舌がしびれるほど甘かった」経験はありませんか?
難しいけど、やり甲斐のある「無肥料栽培」。理屈ではなく、一度は実践してみるのも面白いと思います。過肥より無肥だと「みらどり」は考えます。
少ない位がちょうど良い!無肥に近いギリギリで施肥する少肥が楽ちん♪
仕事の拘束時間が長く、あまり家庭菜園に時間を取れない「みらどり」は、少ない肥料を適宜与える「少肥栽培」が失敗も少なく趣味の家庭菜園ではちょど良いと思います。
実際にどのくらいが少肥なのかの問題はありますが、与える肥料で言えばチッ素・リン・カリが8−8−8位の肥料を、裏書きにある施肥量の70%の量を、裏書き通りの間隔で与える+雨や曇で光合成が出来ない期間は与えないくらいの施肥量です。
また、永田農法のように液肥だけで栽培するなら、土に残った残存肥料成分を考えなくて良いので「1週間に1回の液肥やり」の手間はありますが、比較的失敗は少ないと感じます。
液肥の場合、プランター栽培の場合は特に毎日の水やりで肥料成分の損失が考えられるので、必然的に肥料不足気味に小さく健康的に育つと思います。
本来なら、野菜を毎日観察して「今」の野菜の状況を的確に観察し追肥の間隔や量を決めるのが正解ですが、それが出来たら苦労しません(´>∀<`)ゝ
あくまで趣味というのが前提で、気楽に野菜を栽培したい人向けの「少肥」栽培です。
それでも肥料が効きすぎたり、近くに病害虫にやられた野菜があると「もらい事故」はあるので、無肥より少肥ですが、農薬は「アーリーセーフ」のような物理性を利用したソフト農薬は必要になります。
毎年病害虫で野菜がうまく育たなければ、ぜひ少なめの肥料で「痩せ気味」に野菜を育ててみて下さい!見た目や収量は落ちますが、その分味や品質が良い特別な野菜が味わえると思いますよ(*・ᴗ・*)وヨシ!!
理想と現実!適切な肥料(適肥)を適量、適期に適切な場所に施用する「4R施肥」
参考著書「人を健康にする施肥」にある「4R施肥」こそが、これからの農業に必要な理想の「適肥」だと考えます。
生産性を最大限に高め、かつ無駄な資源(肥料)を垂れ流さず、世界人口の六分の一の慢性的な飢餓状態を無くす為の効率の良い継続可能な農業。それが「4R施肥」です。
監修者まえがきにこう書いてあります。
肥料は現在のところ日本国内では邪険な扱いをされているが、肥料こそ作物生産を通して人間の健康に貢献できること、すなわち「肥料・ミネラルを適切に投与することは、命の源を人間に届けること」であることを本書が世界的視点から提示してくれている。今まさに「肥料の夜明け」を迎えている、と言ってよいだろう。
出典:著書名「人を健康にする施肥」 監修者「農学博士・元東京農業大学客員教授 渡辺和彦」 出版社 「全国肥料商連合会; 改訂第2版」 一般財団法人 全国肥料商連合会HP 監修者まえがきより
趣味で家庭菜園をされている方なら誰でも「農家さんは凄いなぁ」と感じませんか?その年の日照時間や気温などの気象条件や台風などによる自然災害、広大な農地の管理や、病害虫・・・それこそ自然相手なので休みなく働いているように思います。
農林水産省の発表によれば、2018年度の日本の食料自給率は37%(カロリーベースによる試算)と過去最低を記録したそうです(2019年は1ポイント上がって38%)。諸外国と比べても、とても低い水準で推移しています。
法定目標では、令和12年までに日本の食料自給率を45%に定めています。自分の食料は自分で育てる「家庭菜園」を趣味にされているあなたなら、この数字の危機感はご理解いただけると思います。
という事で、日本の野菜をたくさん食べましょう(๑•̀ㅂ•́)و✧
・・・・って、なんの話?!
いや、趣味の家庭菜園でも限りある資源(肥料)を無駄にせず、少しでも食料自給率を上げるお手伝いになるように「4R施肥(適肥・適量・適期・適所による施肥最適管理)」を目指しましょう!なんちゃって(*థ౪థ)♪
過肥(一般的)<無肥(こだわり派)<少肥(おすすめ)<適肥(理想)
【家庭菜園の肥料】過肥より無肥、無肥より少肥、少肥より適肥のすゝめ【まとめ】
上の写真は肥料食いのオクラの栽培実験です。左から無肥(昨年の残存肥料のみ)、少肥、過肥の順番です。写真では見難いですが、過肥のオクラが一番葉っぱが虫喰いが多く、色も濃いと思います。
たくさん実を付けたのは過肥のオクラですが、長く栽培が楽しめたのは真ん中の少肥のオクラです。さすがに左の無肥のオクラはこの後成長を止めて実は付けませんでした。
ホームセンターなどには実に多くの肥料があり、自分が育てたい野菜に適した肥料がどれが良いのか迷われると思います。オクラのように肥料をたくさん必要とする野菜もあれば、トマトのようにチッ素過多で樹ボケする野菜もあります。
また、毎年スタートはすくすく元気に成長するのに、1ヶ月過ぎると急激に生育が落ち、やがて枯れてしまう方も多いと思います。
元肥が切れるタイミングであったり、逆に強すぎる肥料成分で大きく肥満気味に成長した株が病害虫に狙われたのかもしれません。
過肥から無肥に変わると株は急激に弱ります(養水分をたくさん必要な姿形なのに、細根(植物の口)の数が足りない為)。
逆に、無肥から少肥に移行すると病害虫に狙われにくく元気に育ちます(最初に無肥だと、養水分を求めて細根を多く発達させる為)。
種から育てるなら、ぜひ肥料成分ゼロの土で発芽させて下さい。最初は子葉(幼い葉)🌱に成長に必要な栄養分が蓄えられているので、土に養分がない方が根張りが良いのです。
その後株の成長(大きさ)に合わせて徐々に肥料成分を増やしていくのが理想です。小さい頃から何不自由なく成長すると、打たれ弱い大人になるのと似ていませんか笑?
最後にもう一度「みらどり」の考える家庭菜園の施肥をリストにしてみます。
- 芽出しは無肥料の土で行う。
- 株が小さなうちは肥料も少なく管理する(培養土は元肥が強めに効いてしまうので注意)。
- 株の成長に合わせて肥料成分を増やしていく。
- 最終的に市販の肥料の裏書きにある施肥量の70%程度の施肥で痩せ気味で育てる
- 梅雨の長雨や曇が続くときは施肥の間隔を空ける。
- 固形肥料は流水で効くので、プランターなら雨の当たらない所に移動する。
人も野菜も「痩せ気味」で管理するのが健康寿命を伸ばす秘訣です!