はじめに
最強でも至高でも、釣糸の検証をする際は号数表記(標準直径)などに信頼のおけるラインメーカーであるかどうかを必ず確認する「みらどり」です。
今回ご検証するブラックスストリームは、釣糸メーカー最大手である「株式会社サンライン」の最高峰ハリスです。
当然これまで何度も参照してきた、日本釣用品工業会の定める釣糸JAFS基準を遵守しているメーカーに記載があります。
ただし、一部商品は除かれますと注釈があります。
そこで、メーカーに直接電話で問い合わせた所、
「この基準が制定されるより以前に作られた釣糸がカタログに記載されているのでこのような表記になっている」
との回答を頂きました。
一部商品がどれか…の明記が無いのは残念ですが、2010年以降の商品(ほぼ全て)は安心してよいと考えられます。
それでも、基準値の中央値で製紐するメーカーと、上限マックスで製紐するメーカーがあるので、糸の直径を実際にマイクロメーターで計測してみました。
標準直径実測
それでは実際に手持ちのトラウトで使用している0.8号と、シーバスのリーダーで使っている5号の直径をマイクロメーターで実測してみます。
まずはブラックストリーム0.8号の実測値。
ブラックストリーム0.8号実測
0.8号の釣糸JAFS基準は0.148mmです。
実測値は0.154mm。次の規格である1号が0.165mmですので、中央値に近いと言えますね。
釣糸JAFS基準を遵守しないメーカーの場合、限りなく0.165mmに近い数字に寄せて強度を上げてくるので注意が必要です。
続いてブラックストリーム5号を実測。
ブラックストリーム5号実測
5号の釣糸JAFS基準は0.370mmです。
実測値は0.372mm。ほぼ正確に標準直径を守っています。もちろん、計測する場所を数センチずらすと数字は上下しますのであくまで目安とお考え下さい。
ちなみにシーガーグランドマックスFX5号の実測値は0.370mm。1000分の2mm負けましたね笑。
という事で、サンラインのブラックストリームは「フロロカーボンハリスの太さの品質は保証されている」と結論付けます。
ハリスに求める性能
表題ではあえて「最強ではなく」と表記しましたが、最強ハリスはシーガーグランドマックスシリーズである事にかわりありません。
さらに、シーガー独自の二重構造で「最強」に「しなやかさ」もぶっこんで来たのがグランドマックスFXです。
フロロカーボンハリスを原材料から一貫生産している世界で唯一のメーカーだから出せる強度だと思います。
結束強度はグランドマックス
試しにブラックストリーム5号の結束強度を実測し、グランドマックスFXと比較してみます。
前回の記事【そのハリス本当に最強?】釣り人の9割が知らないグランドマックスFX最強の理由にグランドマックスFX5号の実測データがあるのでそれを転用。
グランドマックスFX5号結束強度実測
結節強力の測定条件はクレハ測定方法に準じ一重結び(団子結び)で行いました。
一重結びによる強度実測 約7.4kg
ユニノットの強度実測 約8.9kg
それぞれ3回計測の平均値です。(ドラグチェッカーの5号の補正値+5%)
まさかのパッケージ記載の標準結節強度と同じになりました。
ブラックストリーム5号結束強度実測
結節強力の測定条件はグランドマックスFX同様、ノット強度にバラツキの少ない一重結び(団子結び)で行います。
一重結びによる強度実測 約6.2kg
ユニノットの強度実測 約7.4kg
それぞれ3回計測の平均値です。(ドラグチェッカーの5号の補正値+5%)
この数字は、シーガーエース5号よりは若干強いが、グランドマックスFX4号と同程度の強度となりました。
クレハさんが公表している一重結びによる強度表示と「みらどり計測の実測値」は概ね近似値でしたので、クレハHP記載の結束強度で比較してみます。
号数表記(号) | 標準直径(mm) | エース表示結節強度(kg) | FX表示結節強度(kg) | グランドマックスFX実測と推測値(kg) | ブラックストリーム実測と推測値(kg) |
---|---|---|---|---|---|
0.8 | 0.148 | 1.2 | 1.45 | 1.42 | 1.17(実測値) |
1.0 | 0.165 | 1.5 | 1.8 | 1.90 | 1.45 |
1.2 | 0.185 | 1.8 | 2.15 | 2.34(実測値) | 1.74 |
1.5 | 0.205 | 2.05 | 2.55 | 2.85 | 2.06 |
1.75 | 0.220 | 2.35 | 2.9 | 3.32 | 2.43 |
2.0 | 0.235 | 2.6 | 3.35 | 3.72 | 2.81 |
2.5 | 0.260 | 3.15 | 3.85 | 4.66 | 3.23 |
3.0 | 0.285 | 3.95 | 4.9 | 5.33 | 4.11 |
3.5 | 0.310 | 4.4 | 5.4 | 6.22 | 4.53 |
4.0 | 0.330 | 4.9 | 6.1 | 7.10 | 5.12 |
5.0 | 0.370 | 5.9 | 7.4 | 8.90(実測値) | 6.2(実測値) |
一重結びによる強度比較ではブラックストリーム5号は格下のシーガーエース5号5.9kgよりは強いが、グランドマックスFX4号6.1kgと同等の結束強度となりました。
つまり、結束強度だけを求めるならクレハのシーガーグランドマックスシリーズが最強だとわかります。
プラズマライズの表面改質
しかし、サンラインには革新的な独自技術「プラズマライズ」加工があります。
表面改質が可能なプラズマライズは、フロロの特性自体を変化させる事が出来るのです!
糸の表面を触るとゴムのようなベタベタとして吸い付くような感触は、ブラックストリームだけの特徴です。
また、グランドマックスFXのようなクリアハリスと、ブラックストリームのような染色ハリスではその特性も異なります。
釣り方や個々の考え方で、結束強度かしなやかさか、はたまた粘り強さか耐摩耗性能か、さらには魚に見え難いハリスを選んでバイト率を優先させるか…。
ハリスに求める性能は人それぞれだと思います。
結束強度・耐摩耗性を重視するならシーガーグランドマックスFX。
数字で表し難い【釣り人の感性】を重視するならブラックストリームだと考えます♪
見えないハリス
光の乱反射を抑え、潮に溶け込むステルス効果を生み出す繊細な色味は、染色職人の匠の手によって生み出されています。
ポリエステルを代表とする合繊織物の国内最大の産地である福井県。その土地で染色加工業を営む「株式会社 水井」の代表取締役会長を務める水井幸雄氏は知る人ぞ知る染色職人。
松田氏とは古くからの釣り仲間であった染色職人水井氏によって完成した「海中で消えるブラッキーカラー」がブラックストリームの最大の武器となります。
理想を形にするには
糸に色を入れるには「染める」と「塗る」という2つの方法があります。
しかし、「塗る」と糸の透明度を損なうのでNG。
普通に「染める」と釣り糸の物性(強度や伸び)が変わってしまうのでNG。
トライ・アンド・エラーを繰り返し、匠の技で表面にわずかに染色する事でその課題を見事クリア。
フロロカーボンの物性を損なうことなく、ブラックストリームだけが持つあの繊細な色味をもった釣糸の秘密は職人の染色技術にほかなりません。
これにより魚の目を欺く「見えないハリス」ブラッキーカラーが誕生しました!
クリアか染色か
従来ハリスというのは透明であれば魚に見え難いと考えられてきました。
事実、釣具店に並んでいるハリスやショックリーダーなどは概ね「クリア」であると思います。
しかし、一部の釣り名人達の間で密かに使われてきたのがこのグレーハリスです。
人の目から見たらガラスのように透明なラインの方が見え難いように感じますが、極端に透明なハリスは光を乱反射します。
昔から漁師さんが漁具である投網を柿渋で染めるのには理由があったはずです。
また、新品の網より使い古して色褪せた網の方が魚が良く獲れる…。
それが答えのような気がします♪
切れるのが先か掛けるのが先か
同じ太さのフロロハリスなら最強はシーガーグランドマックスFXで間違いないと思います。
しかし、魚にプレッシャーを与えず実釣力が高いのはブラックストリームだと信じています♪
その理由は前述の通りクリアハリスか、染色ハリスかの違いにあると思います。
グランドマックスは強度重視のクリアハリス。対してブラックストリームは職人が試行錯誤して染め上げた染色ハリスです。
どんなに結束強度が強くても、魚を掛けなければ意味がありません。
つまり、実釣力最強のブラックストリームこそ至高のハリスと言えるのではないでしょうか?
摩擦系ノットと相性抜群
結節強度ではグランドマックスFXに劣るブラックストリームですが、結束しないPEラインとの摩擦系ノットとの相性は抜群です。
プラズマライズ加工により、糸を触るとベタつくような表面は衝撃や擦り傷を吸収する「特殊ポリマー層」を形成しています。
耐擦傷性、結束強力が大幅に向上し、その効果は滑りやすい性質を持つPEラインとの摩擦系ノットの結束強度も向上させました。
PEラインより結束強力の高いリーダーを組んだ場合、グランドマックスFXとブラックストリームの強度差は無くなります(PEが破断する為)。
PEノット強度比較
最強PEラインであるYGKのオッズポート1号のMAX表示強度は25lb(11.3kg)。
対するグランドマックスFX5号のMAX表示強度は24lb(10.8kg)、ブラックストリームには強度表記が無いので、一般的な強度目安20lb(9.07kg)だとします。
この組み合わせで何度計測してもPEラインから破断するので、PEラインのMAX強度は概ね20%マイナスした数字が実際の標準強度だと考えられます。
組糸であるPEラインは、ノットの組み方や糸ヨレなどが原因で強度が安定しないのですが、PE1号でフロロカーボン5号と同程度の強度だとすればその強さが伺い知れると思います。
では、実際にノット技術に差の出にくいハピソンラインツイスターと、シマノPEノッターでそれぞれ実測してみたいと思います。
FXラインツイスターにてノット実測
ハピソンのラインツイスターにて実測。
ドラグチェッカーの5号の補正値+5%で6.6kgでした。ノット部から破断しているので、ラインツイスターの結節強力が低い事がわかります。
わずか1分で結束可能なラインツイスターですが、極細PEでは実力を発揮できても20lbを超えてくるようだと極端に強度が落ちますね。
BSラインツイスターにてノット実測
ハピソンのラインツイスターにて実測。
ドラグチェッカーの5号の補正値+5%で6.4kgでした。こちらもノット部から破断しているので、ブラックストリームが悪いわけではなさそうです。
0.2kgの違いはPEラインのバラツキの範囲内だと思います。
FXPRノッターにてノット実測
シマノPRノッターにて実測。
ドラグチェッカーの5号の補正値+5%で9.18kgでした。
ノット部ではなく、PEラインを押さえているデュアルミニスティックで破断。摩擦が無ければもう少し粘りそうな感じでした。
BSPRノッターにてノット実測
シマノPRノッターにて実測。
ドラグチェッカーの5号の補正値+5%で9.29kgでした。
こちらもノット部ではなく、PEラインを押さえているデュアルミニスティックで破断。ノット強度に若干の違いが生じておりますが、どちらもノット部で破断していないのでPEラインとの結束強力に差が無いのがわかります。
ハピソンのラインツイスターと、シマノPRノッターのノット強度比較になってしまいましたね笑。
ただ、PE1号とリーダー5号というシーバス等に使用するタックルバランスなら、結束強度の違いはさほど問題にはならない事がわかると思います。
とすると、結束強力最強ハリスであるグランドマックスFXより、「海中で消える」ブラックストリームの実釣力で選んだほうがヒット率が上がると考えられませんか?
もちろん、PEラインと結束の必要のない「ハリス」として使用する場合は結束強力が重要な状況も考えられます。
「みらどり」の迷言で締めくくりたいと思います♪
至高のハリス【まとめ】
釣糸に求められる性能は、細くて強い事が一番ですが、時として魚に見破られにくい絶妙なラインカラーが重要な場面もあります。
特に祝日の混雑した釣り場でラインが交差するほどの激戦区ではラインカラーで釣果に差が出ることが多々あります。
魚の視力がそれほど良くないのは一般に知られていますが、ハリスが乱反射する光を感知する能力には長けていると思います。
キラキラとフラッシングするルアーがあるのは、遠くの魚にアピールする為ですよね。
信じるか信じないかはあなた次第ですが…一度試してみる価値はあると思います♪
最後までお付き合い頂き、誠にありがとうございました。
(:D)┓ペコリンチョ
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